2014年5月検診班・カテーテル治療合同班が帰国しました
2014年5月15日
今回の検診班はザブハン県ザブハン中央病院を訪れ、2日間で124人の検診を実施しました。ザブハン県は首都ウランバートルから1,065km西部に位置し、北辺はロシアと国境を接しています。今回の訪問は、横綱日馬富士関のお母様が取り仕切ってくださいました。事前に現地まで足を運んでの丁寧な段取りで、現地の方々も暖かく、こちら側の宿泊費用は中央病院の医師らがお金を出し合って用意してくれました。
カテーテル治療班は166件の心エコー診断を実施、動脈管開存(PDA)17人、肺動脈弁狭窄(PS)8人の計25人の治療、3例の診断カテーテルを行いました。現地病院の医師たちの技術向上も図られ、大いに成果が上がりました。
期間中、厚生副大臣が視察に訪れたほか、C1テレビ局によるドキュメンタリー番組の取材を受けました。ほかに、モンゴル国営テレビ、UBS、チャンネル25がそれぞれニュース取材に訪れました。
活動期間中、首都ウランバートルでも気温はマイナスで、降雪もあり、日本の冬より寒かったのですが、体調を崩す人もなく、無事に活動を終えることができました。
活動に参加された高知大学医学部小児思春期医学 山本雅樹医師、富山大学小児科 伊吹圭二郎医師からそれぞれ寄稿文をいただいていますのでご覧ください。
『HSP の活動に参加して』
高知大学医学部小児思春期医学 山本雅樹
2014 年 5 月 2 日から 5 月 8 日まで、モンゴル国での HSP の活動に初めて参加させてい ただきました。私は以前から HSP の活動には興味をもっていましたがなかなか参加を実現 するには至りませんでした。昨年愛媛大学の檜垣先生にお会いしたときに、HSP への参加 を希望したところ、数日後には羽根田先生からご連絡をいただき、今回の参加が実現しまし た。渡航するまでは、海外に行くことも初めてだったので色々不安なことも多かったですが、 今回の参加は、自分にとって有意義な経験がたくさんありました。具体的には、海外(モン ゴル国)と日本との医療事情を知り得たこと(日本で当たり前に受けられる医療が、受ける ことができない現実を目の当たりにしたこと)、日本中の小児循環器医師との医療活動がで きたこと(トップレベルの catheter interventionist の指導を受けることができたこと、熱 意のある小児循環器医師に囲まれて多くの経験を共有できたこと)、さらに現地の医師との カテーテル治療(なれない英語での discussion も)を行ったことです。等圧以上の PS の患 者や PDA の ADO 治療は、自分にとっても初めてのことであり貴重な経験でした。日常生 活の制限を余儀なくされているモンゴルの心疾患の子供たちとその家族が、今回の治療後 すごく良い笑顔で退院されていく姿は印象深かったです。カテーテル治療だけでなく、多く の子供たちが検診に訪れるのを見ると、HSP の活動はモンゴル国にとって、重要な役割を はたしてきているんだなと感じました。
活動初日は、初めての参加でもあり、どのように動けばよいかわからず、戸惑うことが多 く、また毎日 1 日の最後は疲れ果ててしまっていましたが、全日程でモチベーションを下 げることなく活動できたのは、医師だけでなく現地スタッフを含めた全スタッフが一所懸 命日々の活動を行っておられたことが、自分にも良い影響を及ぼしてくれたためと思って います。
今回、小児循環器医師だけでなく麻酔科医師スタッフほかすべてのメンバーに恵まれた 活動でした。特に現地スタッフの方の協力は言葉に言い尽くせないほどのものでした。毎日 の送迎、昼食、しかもショッピング、観光にまでお付き合いいただき本当にありがとうござ いました。今回の活動で得たことは予想以上に多かったと感じています。今後も HSP の活 動をつづけさせていただきたいと考えております。ありがとうございました。
『HSP の活動に参加して』
富山大学小児科 伊吹圭二郎
2014 年 5 月、カテーテル治療班として、HSP の活動に初めて参加させて頂きました。まず 驚いたことは、カテーテル検査室の設備の古さですが、十分な機器や機材が無い中で検査・ 治療を行っていくということは、日本では経験できないことであり、途上国における医療の 現状を目の当たりにすることが出来ました。限られた医療資源の中で、最善を選択して治療 を進めていく HSP スタッフの皆さんの経験と判断力など大変勉強になりました。今回は 1 日 5-7 件の治療を 5 日間行ったのですが、日本ではなかなか見る事がないような重症度の 肺動脈弁狭窄、動脈管開存のお子さんが多く、カテーテル治療の劇的な効果により、モンゴ ルの子供達の未来が明るく開ける瞬間を感じることが出来ました。治療を終えた後の患児 とその家族の笑顔、感謝の言葉に大きな充実感がありました。日本では当たり前の医療をモ ンゴルでは受ける事ができません。命の重さは変わらないはずなのに・・・ 今後も自分の出来る範囲でこの HSP の活動に協力していきたいと思います。