2025年5月カテ班報告
2025年7月12日
2025年4月26日から5月2日の日程で、2025年度第1回となるモンゴル・カテーテル治療支援活動を行いました。同タイミングで別チームがバヤンウルギー地方検診活動を実施しております。
ここではおもに、首都ウランバートルの国立母子保健センターでの治療支援活動をおこなったカテーテルチームの活動を報告します。

今回のカテ室内の様子です
多くの課題が山積
コロナ明けに大きく人員体制の変わったモンゴルの国立母子保健センター(以下NCMCH)の小児循環器科ですが、デバイスの供給体制にも大きな変更があり、昨年も頻繁に使用するサイズのデバイスがないため治療が予定どおりに行えないという問題がありました。これは2025年5月の今回も同様でした。また、活動再開時にハートセービングプロジェクトの教育対象となっている現地のリーダー格の医師が他国へ研修に行っており、今回の活動に参加できないというハプニングも。加えて出発前に届いていた患者さんのリストが未整理状態だったため今回の活動方針や治療対象をあらかじめ決めることができないままの出発となってしまいました。

檜垣先生を中心に日本モンゴル合同スタッフでの治療の様子

モニターを見つめる医師ら
2025年5月の成果
今回の活動内容は以下のようになりました。

患者さんの親御さんへの説明
初日 午前中 集まっていただいた患者さんのエコースクリーニング(106例)と、そのなかから今回のカテーテル症例をピックアップ。午後カテーテル治療1例。
2日目 1日中カテーテル治療。治療4例、診断1例。
3日目 午前中 日馬富士学園で心エコースクリーニング。午後カテーテル治療3例。
最終日 治療1例、診断1例、経食道心エコー1例。
合計でカテーテル件数11 うち治療カテーテル9、診断カテーテル2。経食道心エコー1例。
熱心な若手医師と研修に来ていた地方病院の医師
現地で主体となるはずの医師が不在だったため、ハートセービングプロジェクトのメンバーがNCMCHの若手医師3名を指導しながら活動を行いました。
途中、今回のNCMCH側の不手際について内子ども病院院長と会見を行い、こちらからのリクエストを改めてお伝えをし、先方からは多忙を理由に手が回らなかった旨の謝罪がありました。思わぬ発見だったのは、中核のドクター不在のなか、若手3名はほぼすべてのカテに入り、終了後の回診にも同行、自ら診察とエコー評価を行うなど、熱意を見せていました。ただ、まだ経験不足は否めず、今後は事前のプランニングや、さまざまな手技の習得を積んでいく必要があるようです。
(4月27日 初日)
106例のエコースクリーニングをNCMCHの若手医師とともに実施。ちょうどこのタイミングにモンゴル国内の各県立病院から心エコー研修のためにウランバートルを訪れていた小児循環器医と内科医5名の先生がたには直接エコーを見せながら指導をさせていただきました。これはモンゴルの地方病院でもスクリーニングができるようにという取り組みかと思われます。
午後は動脈管開存治療のため、日本から持参していたデバイスを使用。2例目は麻酔後に発熱がわかり中止となりました。
(4月28日 2日め)
治療カテーテル4例と診断カテーテル1例を行いました。この日もモンゴルにある在庫だけで足りないため日本から用意して行ったデバイスみ使用しました。この日新たなデバイスが到着しましたがこちらも同じサイズのもののみ10個というラインナップでした。

治療のあとの回診の様子

治療を終えたお子さんとそのお母さんとともに記念写真

治療のあとの回診
勇気と元気を分けてくれた日馬富士学園の生徒さんたち

学校での検診の準備中

検診のためのモニターチェック

検診スタート

受付できちんと並ぶ生徒さん
(4月29日 3日め)

小学校1年生たち

昼食は日馬富士学園のカフェテリアにて

生徒さんといっしょに楽しく

終了後の報告会

検診が終わり最後に記念写真。中央は日馬富士関
この日の午前中は新モンゴル日馬富士学園に出向きました。これは、昨年後半から今年はじめにかけてモンゴル全国で実施された小学校1年生対象の心電図検査の結果で要再検査の判定のあった子どもたちの二次健診として心エコー検診を実施するというものです。結果としては全員が問題なしでした。要再検査が多発した理由は、心電図検診の際に測定設定の一部が成人用となっていたため小児では正常範囲内の数値を異常と検知してしまったことのようでした。モンゴルの就学時児童の心臓検診は始まったばかりです。今後はこうした結果とアドバイスをフィードバックしていくことも必要と思われます。
心エコー検診の結果を学校に報告し、その後、日馬富士学園で生徒さんたちとともに給食のランチをとりました。
初日から問題山積で少しストレスを感じていたハートセービングプロジェクトへの参加ドクターも、日馬富士学園の礼儀正しく明るく元気な子どもたちに逆に元気と勇気を分けてもらったような気持ちになりました。
午後は再びNCMCHに戻り、治療カテーテル3例を行いました。
(4月30日 最終日)
治療カテーテル1例、診断カテーテル1例、経食道心エコー1例。
情報共有の大切さを繰り返し伝えていく
今回、カテ室に入るスタッフ全員による治療情報が共有がなされていないことが原因の治療中止事例が複数ありました。また患者さんご家族が保管している情報を病院側へ開示していなかったという事例もありました。「情報は、共有することで関わるひとみんなの役に立つ」という認識をモンゴルに築くことは相当に難しい(文化的に情報を独占する傾向にあるように思われます)のですが、患者さんの治療という目的のためには、治療に関わる全員による綿密な情報共有が不可欠であるということを繰り返し伝えていく必要があるようです。

2025.5