ウムヌゴビ参加者報告
2025年9月16日
2025年8月に行いましたモンゴル地方検診(ウムヌゴビ県地方検診)に参加された3名の先生方からいただきました参加報告書をご紹介します。
ウムヌゴビでの活動を終えて
新潟大学医歯学総合病院 額賀俊介

検診に訪れたお子さんと
今回、私はハートセービングプロジェクト(HSP)の検診班の一員として、ウムヌゴビ(南ゴビ)地域に赴く機会をいただきました。チームは、リーダーの田村真通医師をはじめ、大阪府立母子医療センターの森先生、秋田大学の服部先生、札幌医科大学の谷口看護師さん、そして現地から参加してくださったウランバートルのモンゴル国立母子保健センター小児科のボロル先生。どの方も人間的な魅力にあふれた方々ばかりで、この仲間と活動を共にできたことはとても幸せでした。
出発前は、活動内容や環境に対する不安もありました。しかし、慣れない現場で最適な健診体制を整えるため、その場その場で互いに知恵を出し合い、力を合わせることができました。限られた条件下であっても、チームワークが大きな力を生むことを改めて実感しました。
現地では、日本では標準的に提供される医療が十分に届かない患者さんの現状を目の当たりにしました。large VSDのEisenmenger症候群やccTGAで適切なフォロー先が見つからない患者さんなど、容易ではない症例も少なくありませんでした。それでも、ボロル先生をはじめ、現地の循環器内科の先生方も積極的にエコーに参加され、「患者さんのためにより良い医療を提供したい」という熱意が強く伝わってきました。医療事情や資源は異なっても、患者さんを思う気持ちは世界共通であることを実感しました。

検診結果を保護者の方に伝える額賀医師(左)、ボロル医師(左から2番目)、服部医師(中央)、保護者の方(右2番目)、通訳のウルカ(右手前)
また、検診地までの道中は、地平線まで続く草原や澄み渡る空など、モンゴルの雄大な自然に終始感動していました。風景とともに過ごした時間や、道中でボロル先生や森先生と歌った「チェリー」や「モンゴル800」は、検診活動と同じかそれ以上に記憶に残る、一生の思い出になったと思います。仲間に恵まれたおかげで、ウランバートルから現地まで片道560kmの道のりも、終わりには名残惜しく感じるほどでした。
今回の経験を通じ、地域や患者さんの状況に応じて最適な方法を模索することの重要性を学びました。今後は、自身の英語の勉強も含め、言語の壁を越えてより良いコミュニケーションが取れるよう努めたいと思います。次回は、モンゴル語で子どもを笑わせられるくらいになって、モンゴルに戻ってきたいです。改めて、この活動に関わってくださった全ての方々に、心から感謝申し上げます。
ウムヌゴビ検診レポート
大阪母子医療センター 小児循環器科 森雅啓

検診に訪れたお子さんと
今回、私はウムヌゴビ県で行われた小児心臓検診班に同行しました。ウムヌゴビ県はウランバートルから約600km南に位置し、ゴビ砂漠の玄関口として知られるとともに、鉱山や石炭業で栄えている町です。 総勢10名(日本人医療者5名、モンゴル人若手小児科医1名、HSPスタッフ4名)で、車で8時間かけて現地へ移動し、164名の心臓検診を実施しました。検診では、日本から持参した心エコー2台と、ウムヌゴビ県立病院が所有する心エコー1台(未使用のまま眠っていたようです)を使用しました。さらに、県立病院の成人循環器科医1名も合流し、ともに先天性心疾患のスクリーニングを行いました。県立病院から参加した成人循環器科医は、1か月間ウランバートルのモンゴル国立母子保健センター(NCMCH)で研修を受けており、先天性心疾患への関心を持つ循環器科医が増えてきているようにも感じました。

ボロル医師を指導する森医師
また、NCMCHから同行した若手小児科医師ボロル先生も心エコーに非常に意欲的で、教育的な時間も十分に確保することができました。 一方、手術が実施可能な先天性心疾患が限られているため、複雑な症例(ccTGA/severe TR、Large VSD/severe PSなど)の治療方針決定に難しさもありましたが、検診終了後に日本チームとモンゴルチームで協議し、方針を確認しました。今回、県立病院のスタッフや患者家族から大変温かく歓迎されました。これまでハートセービングプロジェクト(HSP)が積み重ねてきた活動を通じて、モンゴルの方々がHSPを深く信頼してくださっていることを実感しました。私自身、今後もHSPのプロジェクトに参加し、この信頼を保ちながら、モンゴルの子どもたちに少しでも貢献できるよう努めたいと思います。最後に、多くの調整をしてくださったHSPスタッフの皆様に改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。
ハートセービングプロジェクトに参加して
秋田大学医学部付属病院小児科 服部苑子

額賀医師から指導を受ける服部苑子医師
田村真通先生にご紹介いただき、初めて参加させていただきました。
このような国際貢献のプロジェクトへの参加自体初めてであり、非常に貴重な経験となりました。
検診班では3日間で164人の患者の診察、心エコーを行いました。正常な症例から、カテーテルや日本では手術を検討するような症例まで様々な症例をみせていただき、非常に学びの多い時間でした。上級医の先生方が、手が空いた際に心エコーを手取り足取りご指導して下さり、大変勉強になりました。
今回の検診業務を通じて、世界貢献について深く考える機会となりました。限られた医療資源の中でできる最大限の医療を提供することは、自身の経験や知識のスキルアップに加え、現地の医師との協力、言語の壁をクリアすること、患者さんの生活事情やモンゴルの医療体制を理解し教育することが必要と思いました。検診班でご一緒したモンゴル医師のボロル先生は私と同い年ながら、中央病院へ患者をつなぐ重要な役割を担い、エコーや日本の医療について積極的に学ぶ姿勢に刺激を受けました。

検診を受けたお子さんに折り紙のプレゼントを渡す服部医師
現地の子供たちが、私のつたないモンゴル語の挨拶に返答し笑顔を見せてくれたこと、近づいてきてくれて私の手をつないでくれた光景は、ずっと忘れられない思い出です。
この活動はHSPスタッフの皆さんの協力なしでは成しえないと思いました。通訳やすべてのスケジュール調整に加え、我々がモンゴルについてもっと知ることができるようサポートしてくださり、献身的な姿に感銘を受けました。私は現在秋田大学で小児科後期研修を行っています。今回は全国各地から集まった、錚々たる先生方とお話できる機会となり、後期研修の先の進路や、国内留学のお話も伺うことができて、自身の将来展望についても世界が広がり、非常にありがたかったです。今後国内外問わず研鑽を積み、成長しながらまたこのプロジェクトに参加し、こどもたちのために還元できるよう精進したいと思います。
この度は貴重な機会をいただきましてありがとうございました。またいつでも参加させていただきたいと思いますので今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。