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ハートセービングプロジェクト

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2025年11月モンゴルカテーテル治療支援活動

2025年12月29日

2025年11月21日から24日にかけて、ハートセービングプロジェクトのカテーテル治療チームはモンゴル国ウランバートルを訪問し、モンゴル国立母子保健センターにおいて小児循環器診療支援活動を実施しました。本活動は、診療支援と人材育成を目的として継続的に行っているものです。今回は5月、8月に続き本年3回目となるカテーテル治療支援チームの活動をご報告します。

11月21日(木)20時過ぎに到着したチンギスハーン空港にて

スケジュール

2025年11月21日(木)モンゴルミアット航空にて15:30成田を出発、20時35分チンギスハーン空港に到着(その後市内までおよそ1時間半)。
2025年11月22日(金)午前中 モンゴル国立母子保健センター(National Center for Maternal and Child 、以下「NCMCH」)にて心エコー検診96人、午後治療カテーテル3例、検査カテーテル1例。
2025年11月23日(土)朝回診、午前〜 治療カテーテル10例 終了後今回の全体カンファレンス。
2025年11月24日(日)朝ホテル発 8:55チンギスハーン空港発14:30成田着のモンゴルミアット航空にて帰国。空港にて解散

メンバー

リーダー:富田英理事長(昭和医科大学病院)、大木寛生先生(東京都立小児総合医療センター )、阿部忠明先生(新潟大学医師学総合病院)、
千阪俊行先生(愛媛大学病院)、菊地夏望先生(昭和医科大学病院 )、事務局:B.トーヤ

今回の成果

心エコー検診 96人
診断カテーテル1例(動脈管開存=PDA)、
治療カテーテル13例(うちPDA4例、肺動脈弁狭窄(PS)1例、心房中隔欠損(ASD)7例、肺動脈閉鎖(PAIVS)1例)

活動の詳細

21日に夜はビャンバドルジ氏にお世話になりました

一行は11月21日夜にウランバートルへ到着しました。到着後さっそく元横綱日馬富士関のご招待でウランバートルにあるちゃんこダイニング「TSUNA Restaurant」で夕食となりました。

22日は午前中から心エコー検査を開始しました。富田理事長はこの日の午前中は他のメンバーと別行動で、モンゴル保健省のJ.チンブレン大臣と会談を行い、わたしたちの活動について説明すると同時に活動の際に取得を求められている外国医師等資格確認証の取得の手続きが大変煩雑であることを説明し改善をお願いしました。大臣は日本の医大への留学経験があり、またヨーロッパの医師をモンゴルへ招へいして手術を依頼した経験があるため、わたしたちの状況へ理解をいただき、今後はその手続きの簡素化を図っていただけることになりました。また富田理事長はその後、NCMCHのセンター長J.オトゴンバータル氏と会談し、ハートセービングプロジェクトによるNCMCHでの活動協力契約の更新手続きを行いました。

モンゴル保健省のJ.チンブレン大臣(右)と富田理事長(左)

NCMCHのセンター長J.オトゴンバータル氏(右)と富田理事長

診察を待つ大勢の患者さんとご家族

初参加の阿部忠明先生

しばらくぶりに参加(3回目)の千阪俊行先生

この日のカテはたいへんなものが続きました

22日の朝、今回の治療を希望する大勢の患者さんとご家族が病院の待合室に詰めかけていて、朝から開始した心エコー検査が昼までに終わらなかったため、昼からは、そのまま心エコー検査を行うグループと現地の医師による心カテーテル治療を指導・サポートするグループの二手に分かれて活動しました。

22日のカテの模様。中央は富田理事長

昨年に続き2回目の参加の大木寛生先生

緊張の続くカテ(左からNCMCHボロルマー先生、大木寛生先生、富田理事長、NCMCHホンゴル先生)

最終的に心エコー検査は合計96名に実施しました。同日にはカテーテル治療も4例行われました。この日最後の治療カテーテルが終了したのは夜10時半となったためこの日はカンファレンスを行いませんでした。後片付けをして病院をあとにしたのは夜中12時過ぎでした。

病院の中に居続けでしたが外気はマイナス10度

零時過ぎの病院前

23日は朝8時から夜9時半まで終日カテーテル治療を行い、10例を実施しました。

TEEの指導をする菊地先生(中央)

モンゴル側のチーム一同

 

2日間の合計14例のカテーテル治療のうち、初日の一部症例を除き、モンゴル人医師が主体となってデバイスの留置を行い、日本側医師は指導・支援にあたりました。現地医師の技術向上は大変順調で、コロナ明けからの継続的な協力の成果が確認されました。この日も治療終了が遅かったため、休憩室でデリバリーフードの夜ご飯を囲んでカンファレンスを行いました。

22日の活動終了後のカンファレンス

今回の訪問に先立ち、アンギオ装置のメンテナンスを事前に依頼したことで、夏の渡航の際に多発した機器トラブルは発生せず、安定した環境下での治療が可能となりました。一方で、使用可能なデバイスやガイドワイヤーの種類・数は依然として限られており、コイルが不足していることや、ASD治療用デバイスが途中で尽きる、基本的な治療薬が備えられていない(必要とする患者さんの家族がロシアなどから個人的に入手して病院へ持ち込み、治療に用いていただけるよう病院にお願いしているようです)など、物資面での課題が改めて明らかとなりました。

また、経食道心エコー検査(TEE)を積極的に行う人員が不足しています。技術的に現在発展途上であることから心房中隔欠損(ASD: Atrial Septail Defect)治療は日本側が訪問した際のみ実施されていて、モンゴルではASDの治療のときのみTEEを行なっていることと、現地ではカテーテル術者への関心が高い一方、TEEを担当しようと希望するスタッフがいまのところいないことが理由です。近日中にNCMCH内で心臓血管外科が開設され、院内で外科手術が開始されることを考慮しますとTEE術者の人材育成が今後の重要な課題と考えられます。

症例数が多くなった背景としては、(1) 遠方から来院している患者が多く、次回の受診時期が不透明であること(広大な国土をもつモンゴルならではの理由)、(2) 過去からの未治療症例が残っていたこと(デバイス不足などから緊急性の高い患者さんを優先的に治療しているため)、(3) 17歳を超えると成人扱いとなり医療費負担が増すため、制限年齢前に治療を希望する患者が多かったこと(経済的な理由) が挙げられます。

滞在中、患者間での感染症流行は見られませんでしたが、現地医療スタッフの間でインフルエンザが流行しており、体調不良者も確認されました。
麻酔体制は2名で対応し(8月は事情により麻酔医が1名だったため時間的にも労働的にも大変だった)、時間短縮のため別室で麻酔導入を行うなど、限られた環境の中で工夫を重ねました。

母子健康保健センター内は新たに心臓血管外科手術を行うための手術室と術後ICU(4床)がルクセンブルクの協力下で新設され、年明けの本格稼働が予定されています。ただし外科スタッフの教育はこれから本格化するようです。

手術室は完成していました

術後ICUも出来ていました

患者さんから絵のプレゼント

治療を受けられた患者さん、そのご家族と今回参加のハートセービングスタッフとモンゴルの協力NPOの現地スタッフ

 

今回の活動を通じ、現地医師の診療技術と学習意欲の高さを改めて実感するとともに、医療資源や人材配置、薬剤供給といった構造的課題も浮き彫りとなりました。今後も皆様のご支援のもと、モンゴルにおける小児循環器医療の自立的発展に寄与できるよう、継続的な協力を行ってまいります。

最後に

今回参加された5名の先生のうちお一人は初参加でした。以下、参加者の感想を列記します。
・帰国してから3日間ほど、モンゴルでのたいへんさを夢で追体験していました。でも、大変でしたが楽しかったです。
・短時間で件数が多くて疲れましたけど、楽しかったです。
・モンゴルでは医療従事者と患者さんの距離がとても近いように感じました。
・異なる施設のかたがたと協同で仕事をすることで、それぞれのやりかたの違いなどがわかり、たいへん勉強になりました。
・毎晩帰りが遅く、話に聞いていた星空を見ることも叶いませんでしたので、また参加して、こんどは星空と草原を見てみたいです。→次回のご参加のときはその時間的余裕を作りたいです、なかなかいつもタイトスケジュールですが。今回もお連れしたかったのですが、気温がマイナス15度超えぐらいで、街を離れるには重装備が必要なため難しかったです(by 事務局)。

参加されたみなさま、この活動を支えてくださるみなさま、この度も本当にありがとうございました。
2026年も引き続きご支援ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。