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ハートセービングプロジェクト

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2025年8月カテ班活動報告

2025年10月1日

2025年度2回めとなるモンゴル・首都での治療支援活動を以下の日程と要領で実施しました。同じタイミングでモンゴル地方検診活動も実施しましたが、ここではおもに首都での心カテーテル治療支援活動についてご報告します。

左から片岡先生、松尾先生、柏木先生、喜瀬先生

スケジュール

2025年8月8日(金)モンゴルミアット航空にて14:40成田を出発、19時15分チンギスハーン空港に到着(その後市内までおよそ1時間半)。

2025年8月9日(土)午前中 モンゴル国立母子保健センター(以下「NCMCH」)にて心エコー検診112例、午後治療カテーテル5例

2025年8月10日(日)朝回診、午前〜 治療カテーテル4例 TEEのみ1例 中止1 終了後今回の全体カンファレンス
2025年8月11日(月)早朝ホテル発 7:45チンギスハーン空港発13:40成田着のモンゴルミアット航空にて帰国。空港にて解散

メンバー

9日朝NCMCH前にて。左から喜瀬先生、秋好先生、柏木先生、松尾先生、片岡先生

リーダー:片岡功一医師(広島市民病院)、メンバー:喜瀬広亮医師(昭和医科大学病院)、松尾久実代医師(大阪母子医療センター)、柏木孝介医師(愛媛大学大学院)、秋好瑞希医師(島根医科大学病院)、事務局:B.トーヤ

今回の成果

心エコー検診 112人
治療カテーテル 9例(うち 動脈管開存(PDA)4名、肺動脈弁狭窄(PS)1名、心房中隔欠損(ASD)4名)、経食道心エコー(TEE)のみ1例、中止1例

活動の詳細

チケットの都合で秋好医師のみ前日の8月7日にモンゴル入りしました。8日は夜にウランバートルに到着し、夕食を取りこの日は終了。今回の宿泊先はバヤンゴルホテルでした。
5月と同様にデバイスが病院に揃っていないとすれば予定通りの治療が行い得ない懸念がありましたが、わたしたちチームのぎりぎり到着前日に4月発注分が病院に届いたそうです。

エコー検診を行う喜瀬医師

エコー検診待ちの長蛇の列

検診中の柏木医師

翌9日(土曜日) 朝8時ホテルを出発、9時からNCMCHにて待機中だった患者さん112名の心エコー。当初、午前中で終わらせる予定でしたが、この日に合わせて病院が集めた患者さんがたいへん多く、昼過ぎからはカテーテルと並行してエコーしました。エコーを受けたお子さんがたには、今回の出発前にエドワーズライフサイエンス社様からお子さん方へプレゼントしてほしいとお預かりしたハートの折り紙をプレゼントしました。エドワーズライフサイエンス社様からはまた、治療を受けた患者さんあてのお見舞いカードもお預かりし、患者さんがたへお渡ししました。
初日のカテーテル治療はPDA、PDA、PS、PDA、PDAの5例で、すべてモンゴルの先生に入っていただいて日本・モンゴル合同での心カテーテル治療でした。3例目が終わったのが19時ごろでしたが、窓の外は夕方ぐらいの明るさで、虹がかかっていました。5例目はおもにモンゴルのBat-Undrakh医師主導でやっていただきました。予定ではNCMCHの麻酔科は2名体制でしたが、急遽1名となってしまいました。終わったのは夜中になってしまったため、この日はカンファレンスが実施できませんでした。

エコー検診中の松尾医師

柏木医師(真ん中)と喜瀬医師(右)、バトスーリー医師(左)

エコー検診をする柏木医師

二人のモンゴル人医師

 

進行状況の確認

控室から

 

翌10日(日曜日) 朝8時ホテルを出発、1日中カテーテル治療で、ASD、ASD、ASD、ASD、ASDのかたの経食道心エコーのみ1名、PDAの治療予定が当日になって風邪のため中止1名 という内容でした。終了後、控室でカンファレンスを英語で実施しました。この日は1例目と2例目は日本の医師が第一術者でしたが、3例目、4例目はNCMCHのBat-Undrakh医師が主導でやっていただきました。このBat-Undrakh医師は本年のハートセービングプロジェクトの教育対象の医師で5月には他国へ研修に行っていたため共に活動することができませんでしたが、この8月では他国での研修経験から自信を得たようで、われわれとの英語でのやりとりも積極的に行うようになっていました。
両日ともに、今回のカテーテル最中にたびたびアンギオグラフィー(血管造影装置)が動かなくなるという機材トラブルがあり、関係者がみなたいへんなストレスを感じることになりました。NCMCHでは本来は定期的にメンテナンスする必要のあるアンギオグラフィーですが全くNCMCHでは定期メンテナンスを行っていないようです。長時間の連続使用が原因ではないかと現地のスタッフは考えたようで、途中で電源を落として再起動する、ということをやっていましたが、それでは解決にはなっていませんでした。
一方で、経食道心エコー(TEE)は、初期評価と治療中は日本側がおこなったものの、それ以外ではKhongor医師が実施、Bat-Undrakh医師が初日2日目とも、すべてのカテ室に入るのみならず、いくつかの例では主導でやっていただくところまで来ています。また終了後にカンファレンスでも、モンゴルの先生方が積極的に英語で質疑するなどの様子が見受けられ、自発性を強く感じる回となりました。合同での活動の雰囲気もたいへんよくなってきています。

1日目の3例目終了。19時窓外に虹が

デバイスの説明をする喜瀬医師(左)

喜瀬医師(左)とBat-Undrakh医師(右)

 

 

 

 

 

真剣な現場。左はモンゴルの医師

今回の総括

初日に心エコー検診を受ける患者さんのピックアップをよりきめ細かく

初日の午前中に心エコーをとる予定でしたが今回の来院が112名とたいへん多く、午後にかかってしまいました。あらかじめ症例をピックアップし、その患者さんのみが集まるようにしたほうがより丁寧なフォローができるので、次回はできるだけその方向で進めていただきたいです。

チームでの役割分担

カテ操作、TEE担当などチーム内で役割をあらかじめ決めて、それぞれがその担当の手技に専念して経験を積むと早く上達できるかと思われます。

デバイス問題

デバイスの入荷は年4回と聞きましたが、不足しているデバイス、使用頻度の高いデバイスが補充されていない問題があります。今回はたまたま渡航前に入荷されて良かったですが、これは治療に直結することなのでNCMCH内で早く解決していただきたい課題です。

アンギオ装置のトラブル

今回の活動中に装置が3回停止し、10分かけて再起動することになりました。うち1回はデバイス留置直後に停止してしまい、関係者一同大変なストレスにさらされました。定期メンテナンスが必須の機械ですので、こちらもNCMCHに真剣に解決していただきたい問題です。次回わたしたちが渡航する11月までにはメンテナンス会社に依頼するとのことですが、それが確実に行われないと次回の渡航活動のキャンセルも考えざるを得ません。交換部品が必要な場合、その費用を本年度の予算を用意していないので支出できない可能性があるとのことですが、これは解決していただきたいです。

NCMCHの先生方の進歩

カテーテル室ではモンゴルの第一教育対象者であるBat-Undrakh医師が第一術者として行った例が2例、それ以外でもほぼすべてのカテに参加されました。そのほかの医師の方々もたいへん意欲的に参加されていて、雰囲気としてはとてもよくなってきています。さらに上達するためには、チーム内での役割分担を決め、それぞれがそれぞれの手技の上達に専念して経験を積んでいくことが大切かと思われます。

10日のカテ終了後、患者さんからご挨拶

この回治療を受けられた患者さん、患者さんの親御さん、日本・モンゴルの医療スタッフ一同