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麻酔科医の藤井園子先生からの活動報告

2023年6月20日

2023年5月のカテーテル治療支援活動チームに参加された藤井園子先生(愛媛大学大学院医学系研究科麻酔・周産期学助教・NPO法人ハートセービングプロジェクト理事)からレポートが届いていますのでご紹介いたします。

活動レポート2023.5

2023年5月のゴールデンウィークはコロナ禍を抜けて久しぶりの海外渡航となった。ハートセービングプロジェクトに参加させて頂いての現地活動も、今回私はかなり間隔が空いていた。そこに今年の春渡航された先生方から話をお聞きし、現地の予測不能な状況に驚きつつも納得しながら渡航準備を行った。

モンゴルの国立母子病院では、麻酔科医は麻酔補助看護師とペアで診療している。我々の渡航活動時は、手術予定患者が前日あるいはそれ以降に決定することが多いが、その急に決まった患者にモンゴル人麻酔科医がすかさず術前診察と指示を出す。小児病院らしい丁寧な術前診察をして頂いており、彼らの指摘により難を逃れ得たこともあった。
手術自体の麻酔に関しては、モンゴルでは現在のところ小児心臓手術が行われていないために、麻酔科医もその特有の麻酔管理に明るくない。この分野の麻酔は、通常の麻酔ではすべきとされる事項が禁忌である場合もあり、特に重症疾患では麻酔科医にかなり特殊な知識経験が求められる。現地では教科書が手に入りにくいとも聞き、個人での机上勉強には限界がありそうである。   

今回の渡航では特に医師への教育に重点を置く方針であったため、私もメモ片手に乏しい英語と図解、時にハートセービングプロジェクトスタッフに通訳の力を借りつつ、基本的な循環動態の把握から肺血流調節の重要性、麻酔薬と酸素投与の是非、更には各種カテーテルインターベンションでの麻酔上の注意点などを説明していった。現地医師のみで検査カテーテルも行っている現状では、特有の麻酔管理 を麻酔科医も学んで初めて正確な検査結果に結びつくことも説明した。毎日別の麻酔科医が担当となったが、むしろ沢山の先生と話をする機会が得られてありがたいと考えた。   

我々ハートセービングプロジェクト以外の各国医療派遣チームも母子病院には多く入っており、モンゴル人麻酔科医はそ のチームの麻酔科医とともに麻酔をする場合もあれば、外科医のみの派遣で彼らが麻酔を担当する場合もある。小児心臓麻酔を担当する際に、今回の経験が彼ら麻酔科医の糧となって欲しいと願っている。最後に、今回も貴重な機会に参加させて頂き、ハートセービングプロジェクトの皆様、ハートセービングプロジェクトモンゴリアの方々に御礼を申し上げます。