NPO法人
ハートセービングプロジェクト

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2023年5月アルハンガイ地方検診活動

2023年5月20日

いよいよ3年2ヶ月ぶりに活動再開

NPO法人ハートセービングプロジェクトは2023年2月、2019年12月以来3年2ヶ月ぶりにモンゴル渡航治療活動再開へ向けて富田英理事長ほか3名による2泊3日のパイロット渡航を実施し、モンゴル国立母子保健センターとの間での活動再開のための契約を再締結すると同時に現地の状況をリサーチました。そしてパイロット渡航チームの帰国後、何回かの理事ミーティングを経て、活動再開に向けての指針づくりをするなど2023年度の活動開始への準備を整えました。その後、ハートセービングプロジェクトの医師の会員の方々に広く参加を呼びかけて、2023年の活動参加メンバーを決定しました。

ゴールデンウィークに出発

2023年5月3日(水)、モンゴル地方検診班メンバーである森谷友造医師(愛媛県立中央病院所属 小児循環器医師)、松尾久実代医師(大阪府立大阪母子医療センター所属 小児循環器医師)、谷口智子看護師(札幌医科大学附属病院所属)、安田優人さん(島根大学医学部5年生)、同日出発のカテーテル治療班の檜垣高史副理事長(愛媛大学大学院医学系研究科小児科学講座教授)、中川直美医師(広島市立広島市民病院循環器小児科所属)、藤井園子理事(愛媛大学大学院医学系研究科 麻酔周産期学助教)は成田空港に集合し、モンゴルミアット航空の直行便で14時40分ウランバートルへ出発しました(愛媛大学医学部5年生の清水杏実さんは行きの出発時刻がひとりだけ夜19時出発でした)。ウランバートル到着は19時半(モンゴルタイム 日本時間20時半)、21時にホテルにチェックインしたのちレストランカサブランカで夕食をとってこの日は終了となりました。

前回のアルハンガイ訪問は2010年

5月といえども雪の降る荒野を一路アルハンガイへ

今回訪れたアルハンガイ県立中央病院前にて

 

今回の地方健診先はアルハンガイ県。ここはモンゴル国の首都ウランバートルから580km西方の、国の中央付近に位置する県で、ハンガイ山脈、森林地帯、平原とさまざまな美しい景観を持ち、海抜は1200~3600mと高地地帯で、遊牧が盛んな地域です。県の人口は9,300人(2017)です。
ハートセービングプロジェクトが前回こちらの県で検診活動を行ったのは2010年7月18~21日(17日モンゴル到着22日帰国)。当時はウランバートルから県庁所在地のツェツェルグまでは現在のような形で道が整備されておらず、行きだけで8時間超という大変な悪路のなか車中泊を含めた3泊4日の行程で、アルハンガイからの帰路でウヴルハンガイ県ホジルトに立ち寄り、合わせて2ヶ所での検診活動で178人の検診を行いました。今回の日程は1泊2日で、現地での検診時間を合計8時間としました。

車に揺られて8時間以上

移動手段は今回も車です。アルハンガイまでは国内線の飛行機は飛んでおらず、また鉄道もありません。道路状況は前回よりも整備されており、また幹線道路ができているということでしたが、それでも移動に7時間を見越して、出発日当日の午後から診察を始めるために、早朝4時半にホテルを出発しました。車はランドクルーザー2台を運転手込み(交代要員を含めて計4人)で手配することができ、現地NPOからウルカ、オユンナー、モンゴル国立母子保健センターからアヌージン医師が参加して、総勢11名のスタッフでした。モンゴルの5月はときにより雪が降りますが、今回もあいにく出発当日はかなりの降雪となり、途中の道はぬかるんでいてあまりスピードの出せない状態での行程となりました。

プレゼントに喜ぶ子どもたち&県知事視察とテレビ取材

2020年2月にエドワーズライフサイエンス社様からお預かりした子どもたちへのプレゼント

子どもたちにお配りしました

全部で90セットありました

 

アルハンガイ県立中央病院は県庁所在地ツェツェルグにあります。病院への到着は昼前11時過ぎごろで、県庁の社会政策課長アマルトヴシン氏のアテンドで病院長にご挨拶をしたのち、病院内の食堂で昼食を取りました(病院側の無償提供)。アマルトヴシン氏はかつて日本に滞在していたこともあり日本語を話すことができます。

廊下には日本語でおもてなしのポスターが。

そのポスター前でパチリ

その後、午後13時に検診を開始。途中、県知事が活動の様子を視察に訪れ、また、現地テレビ局が取材に来ました。初日の検診は18時に終了しました。今回、エドワーズライフサイエンス社様から現地の子どもたちへとお預かりしたプレゼント90セットをアルハンガイへ持参し、検診にいらしたお子さんたちにお配りしました。赤くてきれいな袋入りで子どもたちも嬉しそうに受け取っていました。

検診を行う喜瀬医師とそのアシスタントをする医学生の安田さん

きれいなホテルにびっくり

アルハンガイでの宿泊先はマルチンホテルというホテルで、こざっぱりとしたきれいなホテルでした。夕食はこちらのホテルのレストランでいただきました(オーナーであるUlziibayar氏に無償提供いただきました)。

マルチンホテル前にて

庭には小さな橋とゲルがありました

夕食はホテルのオーナーが無償提供してくださいました

今回は103名の検診を実施

翌日は8時にホテルを出発し、8時30分から検診を再開。14時まで活動を行いました。のべ2日間の合計で103人の心エコー検診を実施という結果でした。

 

GE様 どれみクリニック様 ありがとうございました!

今回、検診での訪問が決まった後に、現地病院に設置のエコー機に関して事前情報が届きました。それによると現地にはSIEMENSのACSON X300があるもののプローブが成人対応のものしかありませんでした。そのため、副理事長の檜垣高史先生の手配によるGE Versana Active 1.5と6S、3Scのプローブ、羽根田紀幸永世理事長所属の病院からお借りしてフクダ電子PaoLus+UF76AGとプローブFUT-SA162-5Pを日本から用意して持参することにしました。今回の活動ではこの2つを使って検診を行いました。1つを松尾先生、アノージン先生(小児循環器科1年目の若手医師)、谷口智子看護師のチームが、もうひとつを森谷先生、安田さん、通訳ウルカさん、そして現地病院の小児科医であるガンバ先生がそれぞれ使用しました。

松尾先生によるアノージン先生の特訓

アノージン先生(左)と松尾先生(右)

1対1で英語で説明する松尾先生とそれを真剣に聞いているアノージン先生

チーム松尾の方では、松尾先生がエコーをしながらアノージン先生に英語で説明し、アノージン先生はそれをモンゴル語でご家族に説明、松尾先生がご家族から聞きたい情報についてアノージン先生を介してやりとりする、という流れでした。アノージン先生はメモを取りながらエコーの方法と病態の両方について勉強ができたようで、翌日には自身でエコー検診を行いました。アノージン先生は循環器科配属1年目で、母子センターではまだ心エコーを行ったことがなかったようです。アノージン先生がエコーをすると、やはり時間はかかっていましたが、松尾先生が患者さんや病態を選んだ上でやってもらいましたので、問題はありませんでした。今回の地方健診を通じてアノージン医師にとって大変教育を重視した活動となったと思われます。

モンゴルの地方病院の抱える問題

また事前情報では、県立病院には心エコーを取れる先生がお一人いらっしゃるとのことでしたが、我々が行った時には不在でした。どうやらその先生は成人を診る科の方の所属のようでした。小児科の先生は(モンゴルではどの地方病院もそうですが)心エコーは取った経験がないとのことでした。

今回事前の呼びかけに応じて集まったお子さんの中には術後の患者さんがけっこういらっしゃいましたが、地方病院の小児科の先生は術後の患者さんに対してどういうことを気をつけたら良いか、どこを診たらよいかがわからないようでした。モンゴルの場合、地方病院へ配属になるとそこから先は新たな学びができないということが大きな問題のようです。この点について、今後、私たちがモンゴルで地方検診活動を実施するうえで、地方の病院の医師の方々に対してどういったサポートができるかがひとつ課題でもあります。

親子二代、ハートセービングプロジェクトでの検診を受診したご家族と

二日目の検診終了後のカンファレンスの様子

エルデネゾーで少しだけ骨休め

二日目の活動終了後、共に活動をした現地医師といっしょに病院内のレストランで昼食を取りました(病院からの無償提供でした)。そして挨拶にいらした院長には、日本からのおみやげとしてナース服を20着お渡しし(これは日本の匿名の医院様より新品を寄付いただいたものです)、病院を後にしました。

今回訪れた病院の食堂で

日本で寄付を受けたナース服20着を病院へ寄贈

(右から)喜瀬先生、県病院のガンバ先生、通訳のウルカ、県病院院長

帰路、途中にある世界遺産「オルホン渓谷の文化的世界遺産」の一部であるエルデネ・ゾーという古代寺院遺跡に立ち寄り、1時間半ほど休憩を兼ねて見学をし、モンゴルの世界遺産と歴史についても見識を深めることができました。夕方18時にエルデネ・ゾーを出発、途中ドライブインで夕食を取り、夜中12時過ぎにウランバートルに帰りつきました。

翌日からはすでにウランバートルで活動を始めていたカテーテル班に合流してモンゴル国立母子保健センターで1日活動し、その翌日に日本への帰路につきました。最終日のウランバートルでの活動については、「2023年5月カテーテル治療支援活動」をお読みください。