第3回渡航
2002年12月31日
期間 : 2002年12月20日(金)~30日(月)(実滞在日数9日間) 小児循環器医5名、臨床工学士1名 計6名
<2002年レポート>
2002年8月の渡航の際、日程と器材の関係で治療できなかった子供達の治療目的で、平成12月20日成田より直行便にて出国、30日帰国の日程で行いました。前回の渡航で不足した医療機器の数々(患者の数によって必要となるカテーテルの数も異なる)があり、持込荷物の数はなんと60個でした。今回は国立母子保健センターと国立第3病院の両方で心エコー診断とカテーテル治療を行いました。国立第3病院は、モンゴル国の心臓外科センターの役割を担った病院であり、当時モンゴル国で唯一、心血管造影装置がある病院でした。この血管造影装置は、約20年前の日立製のもので、角度は1方向だけ。解像力は不良でしたが、機能的には現在の日本水準をクリアしていました。われわれとモンゴル国立母子保健センター、モンゴル国立第3病院との合同カンファレンスが持てたことは、モンゴル人医師の教育も今後の主要な目的のひとつであり、意義は大と考えられます。今回行ったカテーテルの内訳は、動脈管開存11名と大動脈縮窄1名のカテーテル治療、冠動脈瘻の診断カテーテルでした。動脈管開存は女児に多い疾患で、日本をはじめとした先進国では男女比が1:1~3といわれていますが、モンゴルではカテーテル治療の対象外も含めると計30名の患者が来院しましたが、男児はわずかに2名、すなわち男女比は1:15でした。動脈管開存の発症頻度は新生児期の酸素濃度に関係しますが、男女比が大きいことは高地で酸素濃度が薄いことが影響しているのか、過酷な気候によるストレスに対する感受性が男女で差があるのか今後疫学的見地からの共同研究の必要性を感じています。
モンゴル国は1992年に新憲法を採択し、正式に民主主義国となりましたが、それ以前は旧ソ連の衛星国でした。そのため、1992年以前の初等教育で英語は教育科目ではありませんでした。その影響もあり、一般的に英語力が不足しています。われわれの活動で、現地の医師・医療スタッフとの会話は、このプロジェクトのきっかけを作ったEnkhsaikhan医師が日本に留学していたこともあり、彼女がおもにモンゴル語・日本語の通訳の役割を果たし、その他は英語でコミュニケーションを図っておりますが、現地医師・医療スタッフの英語力は専門的な会話をするには不十分です。モンゴル国の経済的な原因のみならず、こうしたかつての体制に起因する医療の国際化の遅れも、この国の医療の遅れにつながていることは否めません。そんな中でも、この活動が3回目となり、こどもたちの治療という同じ目的の下での共同作業を行ううちに、脈が通じ合い、お互いの理解が深まったように思います。カテーテル施術の場には多くのモンゴル側医師が立会い、その目で見、また質問があればその場で日本側医師に質問をする様子が見受けられます。また、期間中、モンゴル国立医科大学およびモンゴル国立医科大学附属病院を視察し、学長・副学長・国際交流課長と会見。学生向けに小児循環器総論の講義を行いました。