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ハートセービングプロジェクト

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第4回渡航

2003年10月16日

山陰中央テレビが出発日の空港に取材に来た。
今回はまず成田へ行き、成田17時発ソウル経由ウランバートル行きのモンゴル航空OM502便で入国した。
途中の機内にて。ちょうど北京上空を飛行中。
今回の宿泊先であるパレスホテル。
活動1日めの朝、ホテルロビーにて現地でモンゴル人女性医師Enkhsaikhan氏と打ち合わせ。
活動1日めは快晴。昼の気温は摂氏15度。
まず駐モンゴル国日本大使館を表敬訪問。過去3回の活動を当田大使(当時)に羽根田医師が説明。
日本大使館にて記念写真。前列2名のうち右が当田大使(当時)、左が羽根田紀幸医師。
活動の拠点のひとつである国立第3病院へ向かう医師たち。
さっそく国立母子保健センターの現地医師が事前に行ったエコー検診の結果を元に再度心エコー検査を実施。現地医師の診断は年を追って正確になっているが、治療時期や方法などの点についてはまだ決定できるに至っていない。
心エコー検査中の子どもとそれを見守る母親。
今回の活動3日め。国立第3病院にてカテーテル治療に入る。毎回渡航前に病状をメールでモンゴル側医師から送ってもらい、スケジュールを立てるが、今回も初日の7日の再度行った心エコー検査に基づいてカテーテル実施スケジュールを組みなおした。
カテーテル施術はこのように複数名のチームで行わなければならない。
カテーテル施術中、心血管造影装置の画像を食い入るように見つめる医師たち。
カテーテルにあたり、国際ライオンスクラブと島根山口ライオンズクラブより寄贈いただいた3機のうちポータブル心エコー装置で録画した画像を再確認。機械には「日の丸」がついている。
カテーテル施術を受けている子どもの家族は手術室の前でずっと待っていた。
今回、活動初日に国立第3病院にて医師を対象にカンファレンスと同時に総論の講義を実施した。
羽根田医師とEnkhsaikhan医師の講義には医師のみならず医学部学生も集まっていた。
活動4日目、地方検診班の5名(医師2名、看護師1名、検査技師1名、国立母子保健センター勤務モンゴル人医師1名)が首都ウランバートルから東南東130kmにあるバガノールへ1泊2日の予定で出発した。
バガノール市立総合病院。ここの小児科で丸一日、検診を実施した。
噂を聞きつけて1日で約 70 名来院、うち25名(1名は成人)が心疾患があった。
今回の地方検診実施により、バガノール市長から感謝状をいただいた。
滞在中、一気に寒波が押し寄せ、雪が降った。夜は-6度まで下がった。
活動終了前日、モンゴル国会「安全と外国政策」局を表敬訪問。ここでも感謝状をいただいた。
今回の活動で治療カテーテルを受けて元気になった子と喜ぶ母親。
第4回渡航で治療した子どもたちと帰国前日、国立母子保健センターにて。

 

期間 : 2003年10月6日(月)~15日(水) 小児循環器医8名、一般小児科医1名、臨床工学士1名、看護師1名、検査技師1名 計12名

<2003年レポート>

立ち遅れている小児循環器医療のために治療が放置されているモンゴルの先天性心疾患児を1人でも多く救うことと、あわせてモンゴルの小児循環器医療の自立を目指して平成13年10月よりモンゴル渡航診療を行ってきましたが、第4回となる平成15年度の活動は平成15年10月6日~15日の日程で成田から直行便で渡航しました。いままでと同じく全国から有志を募り、資金は広く日本国内からの募金により、器材はその募金によって日本国内で調達して手荷物として持ち込みました。国際ライオンズクラブと島根山口ライオンズクラブより、500万円相当のポータブル心エコー装置・血管内圧等を直接モニターするカテ-テル検査には欠かせない3チャンネル生体信号モニター・簡易血液ガス分析器を寄贈いただき、これを持ち込むことにより充実した活動を行うことができました。
日本国内からの参加者は、小児循環器医8名・小児科医1名・臨床工学士1名・看護師1名・臨床検査技師1名の計12名で、それにかつて島根医科大学小児科に留学していたこのプロジェクトの立ち上げ者であるP. Enkhsaikhan医師とその夫Y. Orgil氏が現留学先である米国テキサス州ヒューストンから合流しました。
初日は駐モンゴル日本大使館を表敬訪問し、当田大使に過去3回の活動状況をご報告しました。その後、Ulaanbaatar市にある国立母子保健センターで同センター受診中の心疾患児約70名に心エコーを行いました。同センター小児循環器医の診断は正確でしたが、外科治療の時期や方法の指導は行われていませんでした。われわれが行った心エコーの結果を基に、外科手術・カテーテル治療・診断カテーテルの適応の有無を判断。非開心術適応の3例は同じ市内にある同国の心臓外科センターである国立第3病院での手術、開心術適応の11例中猶予が見込める3例は同国での待機を指示、カテーテル結果で米国援助での米国渡航手術が見込めるファロー四徴(TF)2例と肺高血圧(PH)高度の心室中隔欠損(VSD)1例の3例を診断カテーテルに組入れました。カテーテル治療の内容は動脈管開存(PDA) コイル閉鎖と肺動脈弁狭窄(PS) バルン拡張としました。PDAは14例来院しましたが、太い1例は即外科手術、細い1例は待機、残り12例をカテーテルによるコイル閉鎖の対象とし、PS2例は全員バルンカテーテルによる拡張対象としました。心カテーテルは診断・治療いずれも国立第3病院で行いました。診断カテーテルの結果、TFの1例とsevere PHを伴った VSD1例は手術可能と判断され、米国の援助団体Samaritan’s Purseに連絡。カテーテル治療に関しては、PS2例のバルン弁形成は容易で、全例圧較差が満足のいく範囲まで下降しました。PDA12例中、肺動脈瘤合併の1例は診断カテーテルだけにとどめ、国立第3病院心臓血管外科での手術としました。残り11例にコイル閉鎖を試みました。1例はコイル脱落後回収困難となったため、国立第3病院心臓外科医によるPDA結紮とコイル回収となりましたが、残り10例は全例問題なく複数個コイルで閉鎖できました。PH合併が6例で、うち2例は重症心不全(CHF)例でした。コイル脱落手術例はPHとCHF合併の10か月男児でしたが、われわれが術後管理を指導して問題なく回復しました。モンゴルの小児心臓手術は、開心術においては術前診断に問題があるうえに人工心肺装置が入手しにくい現状ではほとんど不可能であることが再認識できましたが、非開心術においては外科医の腕よりも、術前診断・医師の意識意欲・術後管理に問題があることを目の当たりにしました。
今回はじめての試みとして、日本から持参したポータブル心エコー装置を使用しての地方都市小児心臓検診を行いました。検診班の構成は日本人医師3名・看護師1名・臨床検査技師1名と現地医師で、Ulaanbaatarから150 km離れたBaganuur市に出向きました。検診は丸1日かけて行いましたが、Ulaanbaatarからの車での移動に半日を要したため、実質的には丸2日がかりでした。約70名が来院。有問題児はVSD 12例(8例手術適応で、4例は早期受診指導)・心房中隔欠損5例・その他先天性心疾患5例(要精密検査3例)・後天性心疾患2例などでした。チアノーゼ性心疾患はありませんでした。医療資源の乏しい発展途上国の地方都市でも、地元病院との連携やポータブル医療機器の持ち込みにより、住民の要望に合致した効果的な心臓検診が行い得ることが実感できました。
また第1回、第3回に引き続き、今回は国立母子保健センターにて羽根田医師が総論の講義を実施しました。

【考察と今後の活動予定】

モンゴルの小児循環器医療が立ち遅れている原因の最たるものは国全体の経済の立ち遅れですが、われわれが手を差し伸べられる範囲でもっとも問題なのはモンゴル人医師の意識・意欲であることが今回の渡航で明らかとなりました。意識改革には時間を要するので本活動の継続が重要であることに変わりはありません。われわれが治療を実践してみせることの継続も大切ですが、術前診断・術後管理の指導などの教育プログラムを充実させることがより重要であると改めて認識しました。