NPO法人
ハートセービングプロジェクト

お問い合わせ

2019年8月ウヴス県健診

2020年1月14日

2019年8月の活動に参加されました理事の檜垣高史先生からレポートをいただきましたのでご紹介いたします。

2019年8月ウブス県健診に参加して

ハートセービングプロジェクト理事/愛媛大学大学院医学系研究科 地域小児周産期学教授 檜垣 高史

20198月、ハートセービングプロジェクトの活動は、カテ第2班・UVS(ウヴス)検診班・Uvurkhangai (ウヴルハンガイ)検診班の3部隊構成でモンゴルに渡航して参りました。
検診部隊は、201987日に一足早く出発しました。全国から 成田に集合して、MIATモンゴル航空でウランバートルへ。成田で、飛行機の機材繰りのため出発が4時間遅れましたが、まあ、こんなものかな、と思いながらのスタートです。ウランバートルへの到着は夜遅くなりましたが、ハートセービングプロジェクトモンゴルのスタッフが空港まで出迎えに来ていただいて感動の再会でした。

さあ出発です

翌朝、午前中に母子センターでカテーテル治療予定の患者さんの心エコーチェックをしてから、検診部隊は、2部隊に分かれて、それぞれ、UVS(ウヴス)Uvurkhangai(ウヴルハンガイ) へ出発です。私たちは、HUNUU AIR(フンヌエアー)で、UVS(ウヴス)にむかいました。私自身2002年からこの活動に携わっていますが、地方検診は久しぶりの参加でちょっと楽しみでもあり緊張でもありました。

オブス検診班のメンバーは、母子センターのウンドラル先生、寺田一也先生(四国こどもとおとなの医療センター循環器科)、奥貴幸先生(愛媛大学小児循環器)、西山貴子さん(エドワード社)、徳本大起君(愛媛大学医学部4回生)、大束亮さんご夫妻(通訳)、トーヤさん(事務局)、アムラーさん(事務局)そして私の10人です。

しかし、ここでトラブル発生。空港で事務局の方々の不穏な動きを不安に感じながら待っていると、帰りの飛行機がキャンセルになったとのこと。1日遅らせるか、別の経路を手配するか、1400kmを車で帰って来るかの選択。ここで、さすがのオユナさんたちです。航空会社と調整(???・・・?)してくれて、予定通り運行されることになりました。この文章を書いているのは、ちょうど空港の待合室ですが、本当に帰りの飛行機が飛ぶようになるのかどうかまだ半信半疑な感じです。そして、HUNUU AIRの飛行機は予定通り?ウランバートルを出発して、無事にウブス県のウラーンゴムに到着しました。行きはよいよい帰りは???

ウヴス湖

オブス県は、モンゴル西北部に位置し、ウランバートルからは1336km離れていて、県名はモンゴル最大の湖であるУвс Нуурウヴス湖)にちなんで名付けられたそうです。Увс Нуурは、海抜759 m、面積3,350 km²(愛媛県が5,678 km²、東京都が2,188 km²)。この湖は塩分の濃い浅い湖で、数千年前にこの一帯には海が広がっていた名残とのことです。湖岸の最大の都市が、ウブス総合病院がある県庁所在地のウラーンゴムです。
ウラーンゴムのホテルにチェックイン後、ウブス総合病院へお伺いしました。院長先生、保険局長さんらにご挨拶をした後、もう夕方でしたが暗くなる前にと、ウブス県の名前の由来でもあるウブス湖に連れて行っていただきました。モンゴルの夏の夜は快適でとても長いです。1時間ほど、草原の中を車(乗せていただいた車はなんと病院の救急車です)に揺られてウブス湖に到着しました。

ウヴス総合病院前

 

とても大きくて、とってもきれいなウブス湖に吸い込まれていきそうな感じで、すばらしいウブス湖の魅力に感激しました。院長先生、保険局長さんはさっそく湖に入り泳ぎ始めて、私たちにも泳ごうと誘ってくれるのですが、8月といえども北のほうにあるオブスは寒いかもと教えられてきたので、準備してきたのは防寒です。まさか湖で泳ぐことになろうとは。しかしそこは気合で、私たちも水着はないけれど湖へGO!。ちょっと寒かったけれども、入ってしまえば大丈夫でした。遠浅のウブス湖はとても心地よく、ちょっとしょっぱい塩湖を実感しながら大自然を堪能しました。

湖畔での夕食です

 

そのあとは、ウブス湖の遠浅に机を並べてあっという間に晩餐会のはじまりです。羊の肉料理にはじまり、地元でとれるじゃがいも、にんじんなど、とってもおいしかったです。お決まりのアルヒ(モンゴルの蒸留酒)も登場して、一気に盛り上がり、院長先生、局長先生のお歌に引き続き、日本側も、うさぎおいしかのやま~~~と、ふるさとを熱唱しました。ウブス湖の素敵な夕べでした。ほんとうにありがとうございました。Бид Увс Нуур их сэтгэг хөдөлсөн. Өнөөдөр маш их баярлалаа.(ちょっとだけモンゴル語でお礼をお伝えしました)。

健診の開始です

翌朝からウブス総合病院で心臓検診の始まりです。検診は89日、10日の2日間で、初日は114人、2日目は半日で41人、合わせて155人の子どもたちの心臓検診を行いました。そのうち、ウランバートルでのカテーテル治療をスケジュールした患者さんは6人でした。治せないかもしれない子どもたちも2人いましたが、私たちとしては、できるだけ正確な診断をして、できるだけいい提案ができるようにという思いで検診をさせていただきました。寺田先生の丁寧なご家族への説明、奥先生のがんばりで検診がすすんでいきます。西山さんは素敵な笑顔で子どもたちを引き付けて、折り紙を折って日本の遊びを伝えたり、ほっぺにシールを貼って子どもたちの笑顔が増えました。
ウブス総合病院の小児循環器の医師、アギーマ先生も大活躍されました。一緒に子どもたちの心エコー検査をして診断していきました。私たちも、アギーマ先生に指導しながら、できるだけ心エコーの取り方や診断のポイントなどについてお伝えしました。

医学生もチャレンジ

学生さんも、チャレンジしました。学生さんが担当した患者さんに動脈管開存が見つかり初めて診断しました。自分では何もできないことがはがゆくて、こんどは医師になって自分で役に立つようになってからまた来たいといった言葉が印象に残っています。きっと、将来活躍する医師になることまちがいなしと期待しています。愛媛大学の学生にハートセービングプロジェクトに参加する貴重な機会をいただきありがとうございました。

この病院の小児循環器医は、アギーマ先生おひとりだけで、その診断能力や病態の理解などについては、まだまだ十分とはいえない状況なので、現時点では、どうしても渡航した日本人医師主導で検診を行っていくことになってしまいます。

心エコー健診をする檜垣先生

この度地方の基幹病院で検診をさせていただいたことによって、現地の医師に診断技術を伝える仕事はとても大切だとあらためて感じました。順番を待っている多くの患者さんたちには、待ち時間が少し伸びるかもしれないけれども、モンゴルの先生、特に地元のモンゴルの先生の教育に時間を費やすのであれば、ちょっとお許しいただきたいと思いました。アギーマ先生がオブスの患者さんの診断や病状をよく把握できるようになって、治療を施したり、ウランバートルや海外への紹介の手配が的確に行われるようになれば、地元の患者さんたちはもっと安心できるようになると思いました。
オブス県は、母子センターの小児循環器医師バヤルマ先生の故郷です。今回は、仕事の都合が合わず一緒に活動はできませんでしたが、ウランバートルの母子センターの小児循環器のチームと、ウラーンゴムのウブス総合病院で頑張るアギーマ先生とが、うまく連携して診療できるようなシステム構築の必要性を強く感じました。1,400kmと遠く離れてはいますが、モンゴル国内の医師の教育体制についても少し提案できれば幸いです。

さて、検診を終えて、ウランバートへの帰路に向かうのですが、飛行機がほんとうに飛ぶのかどうか不安がよぎります。ウラーンゴム空港に到着してみると、飛行機は、なんとオブスからホブドを経由して、さらにムルンに寄ってから、ウランバートルに向かうということになっていました。一旦欠航することになった飛行機が飛ぶことになったことにも驚きましたが、乗るまで経由地がわからないのもなんともおおらかな感じです。

ウラーンゴム空港にて

ハプニングとは、(ググってみると)、「思いがけない突発的な出来事・事件」と記載されていますが、次々と予想?期待?していたかのように起こる、事務局のみなさまの強力なバックアップの安心感のもとでのハプニングは強烈な刺激でした。ウラーンゴムを飛び立った復路の飛行機は、まるで乗り合いバスのように、広いモンゴルの各地を経由しながら、ウランバートルに到着したのは真夜中でした。チンギスハーン空港の明かりをみた時には、ふるさとに帰ってきたような安心感を覚えたのは、私だけではないのではないでしょうか。

心カテーテル治療中

治療を受けた患者さんと

Uvurkhangai(ウヴルハンガイ)検診班とあとから渡航してきたカテ班と合流して、明日からは引き続きウランバートルでのカテーテル治療の活動開始です。本プロジェクトは、心臓カテーテル治療で子供たちが救命されるようになると、自然と心臓検診が始まり、今ではカテーテル治療と地方都市検診の両輪のプロジェクトとして発展しながら活動を継続しています。モンゴルの心臓病の子供たちが、1人でも多く元気になることを目指して、最終的にはモンゴル国の小児循環器診療の自立に向かうことを目標として尽力していきたいと考えています。
オブスの検診をはじめとするHSPの活動を通して、モンゴルの子どもたちの幸せのために純粋に努力する多くの方々と出会い、本当に多くのことを学びました。この場をお借りして心からお礼を申し上げます。

今回治療を受けられた患者さん、そのご家族、スタッフ一同。新モンゴル日馬富士学園の理事長と一緒に!!

何よりも子どもたちの笑顔に力をもらいながらこれからもできる限りハートセービングプロジェクトの活動に携わっていくことができれば幸せです。
どうもありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。