NPO法人
ハートセービングプロジェクト

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第7回渡航

2006年8月13日

第7回モンゴル渡航小児循環器診療参加者全員です。
第7回渡航からはGE社製の最新のポータブル心エコー装置Vivid Iをメーカーの厚意で無料貸し出しを受け、モンゴルへ持参してカテ前検査、検診に使用しています。
駐モンゴル日本大使館を表敬訪問し、われわれの活動の趣旨、進捗情況、今後の方向などを説明しました。
その後、駐モンゴル日本大使館から吉岡秀樹医務官がわれわれの活動を視察されました。
国立母子保健センターでのエコー検査の様子。最新のポータブル心エコー装置でにエコー検診もたいへんスムーズに行われています。
2機のエコー機により次々とエコー検査をすすめることができました。
検診の結果を多くの医師が見つめます。
モンゴル国立第三病院でのカテーテルの模様を日本大使館の吉岡医務官が視察されたときの様子です。
モンゴル国立第三病院でのカテーテル治療では第三病院の医師、技師と共同で実施です。
2004年にオーストラリアのロータリークラブとシドニーの病院の協力で国立第三病院内に設置されたカテーテル室で施術を実施しています。
第7回の渡航の結果は治療カテーテルは20例、診断カテーテル9例でした。
モニターに見入る医師たち。
右から2番目がモンゴルの第三病院の医師です。
中央がモンゴルの第三病院の医師、国を超えて真剣に共同で施術を行っています。
第7回渡航で治療した子どもたち。
治療した家族からおみやげもいただきました。
帰国前日夕方にウランバートル近郊の草原で現地スタッフと交流会が開かれました。
お弁当の羊のゆで肉です。たいへんおいしかったです。
18時に30℃あった気温が、21時の日没とともに急激に下降し、23時には18℃。
今回、地方検診を行ったブルガンの病院。ここで丸一日検診を行いました。57名の検診を行い、うち10名が循環器疾患の有所見者でした。
ブルガンでの検診の翌日早朝、エルデネトへ向かいました。
半日後、エルデネトの到着後さっそく検診にとりかかりました。59名の検診を行い、うち14名が循環器疾患の有所見者でした。
エルデネトでの検診を聞きつけてまだ小さい赤ちゃんを連れてお母さんがやってきました。
循環器疾患が疑われる患児に心エコー検査を実施。
地方検診を行ったエルデネトの病院の前で、訪問した日本側医師・スタッフと現地病院の医師たち。わずか1日の検診でしたが、国を超えて協力しあい絆が生まれました。

 

期間 : 2006年8月5日(土)~8月12日(土)小児循環器医13名、研修医1名、臨床工学士1名、看護師1名、検査技師1名、超音波検査士1名、カメラマン1名 計19名

第7回めとなる今回も、今までと同じく全国から有志を募り、資金は広く日本国内からの募金により、器材はその募金によって日本国内で調達して手荷物として持ち込みました。今回は小児循環器医師13名を中心に、研修医・臨床工学士・臨床検査技師・超音波検査技師など計19名で医療チームを編成しました。途中、モンゴル国内のテレビ・新聞などマスコミに大きく報道されたため、予定患者以外にも多数の来院があり、最終的には心エコー検査80名、心臓カテーテルは29名(治療20名、検査9名)に及びました。
治療カテーテルは8月7日から10日までの4日間連日で行いました。治療カテーテルの内訳は、動脈管開存を経カテーテル的にコイルで閉鎖したのが18名、肺動脈弁狭窄をバルンカテーテルで拡張したのが2名でした。バルン拡張した2名の肺動脈弁狭窄は、右心室が左心室と等圧か左室より高い重症例でしたが、問題なく拡張できました。動脈管開存症例は外科手術から年数が経過した術後残存例の重症例が多かったこと、治療カテーテルの期間が4日間と短かったこと、前もって予定していたよりも多くの患者が来院したことなどから非常にタイトなスケジュールでした。毎朝8時30分に治療を開始し、早いときで夜8時半終了、遅いときは夜中の0時過ぎまでかかることもありました。術後で太い動脈管が残存していた成人例ではコイル脱落がありましたが、無事回収でき、最終的には全員合併症なく終了しました。この症例は平成19年1月の第18回日本Pediatric Insterventional Cardiology研究会において報告いたしました。カテーテル治療した20名のほとんどは心不全症状が顕著でしたが、全員元気になりました。いままでの症例とそのまとめを同じく第18回日本Pediatric Insterventional Cardiology研究会でpreliminary studyとして報告しました。冠動脈血流の変化に関しては、今後さらに症例を重ねていく必要があると考えられます。
第4回渡航から行っている地方都市での小児心臓検診は、今回はウランバートルから北西へ約300キロはなれたブルガン県ブルガンとオルホン県の首都エルデネトで実施しました。
道はアルハンガイ県方向(西へ向かうルート)と、ダルハンオール県へ向かうルートの2通りあり、西ルートのほうが道路の状態もよいのですが、この年は雨の影響などで西ルートが一部通行止めとの情報を得ていたため、まず北へ向かい、ダルハンから南西へ向かうコースとなりました。そのため、ウランバートルからブルガンまでは片道500キロあまりという長距離でした。朝ウランバートルを出発し、初日にブルガンに到着したのが夕方。そこで1泊し翌日が地方検診となりました。1日間ブルガンで検診を行い、翌日の朝ブルガンを出発。ブルガンからエルデネトはならされた道はなく、砂利道でかつアップダウンが多い悪路でした。エルデネト到着まで半日ほどかかりました。エルデネトはウランバートルに次ぐ第二の都市といわれています。旧社会主義時代から鉱山を持つ町として栄えてきました。ここで到着翌日の丸一日、検診を実施しました。
ブルガンでの検診受診者数は小児が57名。うち循環器疾患の有所見者数は10名、小児とは別に成人では有所見者数5名。エルデネトでの検診受診者数は小児59名。うち循環器疾患の有所見者数は14名。いずれも今後の診療についてのアドバイスを実施しました。
さらに、島根県出身横浜在住の春日行雄先生が私財で運営されているウランバートル郊外の孤児院「テムジンの友塾」へ、島根県出雲市塩冶小学校生徒さんから託されたチャリティー品を持って、活動初日の心エコー検査後に慰問しました。
このプロジェクトのゴールはモンゴルの小児循環器医療の自立においています。外科手術の成績が不良なモンゴルの実情を考えると、モンゴルのこどもたちを救う現実的な方法は、まずは病名だけでなく治療方法や時期までも含めた正確な診断ができる小児循環器医を育てることです。そのためには、モンゴル人医師を息長く指導しながら、治療の有力な方法のひとつとして、われわれがカテーテル治療の実践を継続していくことが必要と考えています。国全体の経済が厳しい状況にあるモンゴルでは、心臓外科医のレベルアップをはかることもカテーテル治療を進めることも困難な状況にあります。しかし、経済状態が厳しいから何もしないのではなく、できるところから同国の小児循環器のレベルアップを進めることが大切であると思います。その意味で、カテーテル治療の実践と併行して、講義、症例検討会、地方都市検診も行っておりますが、今後これらの教育プログラムの充実がより一層大切だと考えております。

第7回渡航の心カテ結果

治療カテ 20 例 (すべて成功)
動脈管開存コイル閉鎖18例
肺動脈弁に対するバルン弁形成2例

診断カテ9例
モンゴルで手術5例
(米国外科チームとも検討)
軽症のため経過観察1例
難症のため治療法検討1例
手術不可(手遅れ)2例